レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ストーカー」(1979)です。
そうです、巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督のSF映画です。彼は、寡作の映像作家でその独特のロングテイクで、素晴らしい映像美を特徴とします。口が裂けても、ただ雨漏りする家を映しているだけじゃないと軽口を叩いては駄目です。
この作品は「惑星ソラリス」と同様に原作がありSF映画です。でも、あまりSF映画らしくなく、別の隠し味がありそれは後述しています。
映画は、朝早く、ソ連のある町の酒場に「教授」と「作家」の2人の男が、案内人(ストーカー)待っているところから始まります。モノクローム映像で中々好いんです。
二人の男は、厳重な警備のゾーンと呼ばれる場所に侵入し、願い事が叶う"部屋"に入る為にストーカーを頼んだのだった。厳重な警備を掻い潜ってゾーンに侵入した男達、ゾーン内のカラーになり、又時々モノクロームへと。
やがて、男達は"部屋"に辿り着くと、教授が思いがけない行動をするのだった…
この映画、最初に鑑賞した時とても耐えられない作品でした。禅問答のような会話、ゾーンと言っても壊れた戦車とか倒れた電柱のある草叢を淡々と歩くだけで、SFらしくなくロングテイクの単調な作品というのが私の評価でした。「惑星ソラリス」の方が何倍も素晴らしいと最近まで考えていました。
数年前、2013年頃だったと思います。TVで福島原発事故のドキュメンタリーを放映していた時、荒れた避難地区を淡々と映し出していました。あれ、こういう映像どこかと見たことあるなと考えているとこの映画「ストーカー」だったことを思い出した。
そうか、あの映画はSFと言うスタイルを利用して、ソ連で多く発生していた原発事故、例えばキシュテム事故等を暗に批判していたのかと。さすが、私のような若輩者には到底考え及ばないことをやっていたのだと反省する次第。
以後、この映画を見ると、あのゾーンシーンで時々涙がこぼれてきて…
いや、本当に素晴らしい映画だ、予言の映画だったのだと。雨漏りする家を映している映画だと軽口を叩いていた自分が恥ずかしくて。鑑賞するには少しばかり難儀をしますが、本当に隠し味が効いた映画です。ご覧になれば分かります。ぜひご覧になって下さい。
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