レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「ヒンターラント」多分に実験的、ドイツ表現主義を思い起こさせるクライムサスペンス映画…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ヒンターラント」(2021)です。

映画は1920年、オーストリア・ハンガリー帝国将校として参戦そして敗北し、ソ連の捕虜としてシケた機帆船に乗って黒海からドナウ川を下ってウィーンに到着した元刑事ペーター(ムラサン・ムスル)は帰国する。国では赤色革命が進行中の有様で、目を覆う有様、妻のいるアパートに行くが妻は実家に戻ったと聞かされる。そんな中、一緒に帰国した戦友の元兵士が拷問されて惨殺される。心身共に疲れ果てたペーターだったが、かってのウィーン警察の同僚、いまでは偉くなっていたが、と共に猟奇殺人事件の捜査を始めるのだった…

なかなか面白いシュチエーションの捜査物です。第一次大戦後ウィーンで起こった帰還兵を巡るクライムサスペンスで、プロットの面白さよりもそのスタイル、ブルースクリーンを使用して当時のウィーンを再現しており、これがなかなか見応えがあります。

映画の国籍がドイツ系なので、どうしてもドイツ表現主義タッチがあちらこちらに散在して、更に音響効果も又ドイツ語の厳しい響きも良く、うーん、美しいです。

この手の映画は、ハリウッドでも「シン・シティ」等ありますが、どうも此方の方が志が高い感じですが、只お話が暗いのが頂けませんが。この映画が真実を言っているとは思いませんがボリシェヴキによる捕虜収容所管理ってかなりの物だったということが理解できました。

終盤、聖ステファン大聖堂の鐘楼屋根裏での対決シーンはサスペンスを盛り上げてくれて大変良い。例えば「ジャッカルの日」「影なき狙撃者」の様な感じで。大傑作ではありませんが、手堅く纏めていて私は大変気に入りました。ラストだけロケ撮影も良い感じでした。

監督は「ヒトラーの贋札」のステファン・ルツォヴィツキー、ケルナー検死医を演じたリヴ・リサ・フライスがサラリと演じていて、なかなか良かったことを付け加えておきます。                               八点鐘 

 

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