レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「プライベート・ウォー」(2018)です。
この作品は、2012年2月にシリアで亡くなった戦場特派員メリー・コルヴィンを主人公にした映画です。そう、その少し前、日本のマスコミが「アラブの春」と言って平和が来たとはしゃいでいた頃です。
私も、不勉強で彼女のことをこの作品で初めて知りました。さすがというのか、白人種は強いと思います。女性で銃弾、迫撃砲弾、IED(手製爆弾)等が炸裂する内戦(戦場)に向かって取材するのですから。もの凄いジャーナリズム根性です。日本にはいないでしょう。又、彼女はアドレナリン・ジャンキーなのでしょう、その戦場の匂い、あの雰囲気がたまらないのでしょう。
映画は、スリランカ内戦、タミル・イーラム"解放の虎"の部隊に紛れてメリー(ロザムンド・パイク)が取材中に政府軍の待ち伏せに遭い、RPG弾頭による顔面銃創を負い左目を失くします。
アイバッチを付け、英国プレス賞を貰い、イラクでカメラマン、ショーンと共に虐殺現場の死体遺棄場を探し出し、アフガニスタン、リビアに取材。特に内戦状態のリビアでカダフィ大佐とインタビューに成功。
そして、シリア内戦のホムスで取材中、砲弾の破片で死亡。
なんとまあ、凄いキャリアというか行動力。例えば、サミュエル・フラーがこのストーリーを監督すれば、ハードボイルドタッチで「最前線物語」のように映画にしたかもしれませんが、この監督マシュー・ハイネマンはドキュメンタリー出身のようで、生々しく大変優れた作品になっています。そういう意味で死体、死体、死体という映画になっていますが、抑制された描写になっています。
ロザムンド・パイクはボンドガール出身ですが、その昔のボンドガール(美しいだけのお人形さんタイプ)ではなく、なんとまあなかなか演技力を見せてくれます。例えば、左目を失い、深夜一人鏡の前で左目の包帯を取り、その傷を見て号泣するシーン等。
やはり、この職業は女性の様に感情が細やかな人では無理だと思います。彼女はロンドンにいる時は、飲んだくれて、物凄いヘビースモーカー、時々戦場の幻影を見るPTSD、そして女性が故のその細やかさが最後の脱出に遅れ、その戦場で命を落としたようにこの作品では描かれています。
シリア内戦は10年目に入り、2015年にロシア軍事介入でより混迷状態に陥り、難民が欧州へ流れ、想定外の移民の為、欧州各国の諸制度が崩壊しようとしています。
プーチン大統領だけがホクホクと喜んでいるのでは。だから、温和なル・カレ先生も彼奴はクソだと最新作に記している程です。
今回、意図したわけではありませんが偶々天才創作舞踊家、最高裁判事、戦場派遣員と素晴らしい業績を残した女性の映画をご紹介しました。やはりお薦めは法曹界が一番だと思います。私個人はメリー・コルヴィンのような方を応援したいと。
このブログ作成にBD版を鑑賞しています。 八点鍾
追記
その昔、BBCのスリランカ内戦時の赤十字活動のドギュメンタリーを見たことがあります。内容は、スリランカ政府軍には反政府軍に人間的扱いを、反政府軍には地域住民を巻き添えにするような作戦活動を押さえて欲しいと。本当に良く出来たドキュメンタリーでした。NHKもこれくらいの作品作って欲しいと思います。