レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「日本のいちばん長い日」(1967)です。
映画は俗にいう宮城事件を描いたもので、大東亜戦争末期、昭和20年7月26日に発せられたポツダム宣言の発表を受けるところから始まる。沖縄戦が終結し大日本帝国は本土決戦を前提にその準備をしていた。
が、広島への原爆投下、ソビエトの対日参戦、長崎への原爆投下が伝えられ、やもう得ずポツダム宣言を受諾しようとするのだが、市ヶ谷の青年将校椎崎中佐(中丸忠雄)、畑中少佐(黒沢年雄)、井田中佐(高橋悦史)は、本土決戦を行うことなくしてポツダム宣言を受託することに怒りを覚え近衛師団長を殺害し、クーデターを起こそうとするのだが…
岡本喜八監督の力作です。私の好きな映画の一本です。と言うより国民映画として分類されるべき作品で、戦後22年、まだ多くの軍人軍属が存在しつつも当時の異様な雰囲気がとても良く出た政治映画だと思います。特に高橋悦史、黒沢年男、横浜警備隊佐々木大尉を演じた天本英世が異色の出来で記憶に残る。
一部の官吏達が国策を間違えるといかに国家、特に国民に膨大な被害をおぼよすか、先の大戦では敗戦為、それこそ国民、一部軍人特にシベリア抑留者には耐えがたい苛烈で痛恨の体験だった。
元々、蒋介石軍とは宣戦布告をしない武力衝突であったが、コミンテル等の謀略により日米交渉、ハルノートと進み、裏口から参戦してきた米国との戦争となり、第一段階は予想以上の戦果で推移したが、攻勢終末点を超える作戦活動により次第に米国との国力の差が出て、この様な結果になることは概ね想像できたと思われる。
加えて、他国の例として、英国ではダンケルクで欧州から蹴落とされてもバトル・オブ・ブリテンでルフトバッフェを跳ね返し、米国と共に欧州に再上陸した英国、降伏した仏国から英国に逃げたド・ゴール将軍は植民地軍を結成し、再度米国と共に欧州上陸、祖国解放に力を尽くしている。それらに比すると、我が国は敗北するにももう少し上手く出来なかったのだろうか? 残念でならない。
そういう意味で、先の大戦は今後ももっと研究、国民として忘れてはいけない出来事だと思います。
2015年に製作された同名の映画は良心作ですが、このクーデター未遂事件にはあまり触れず、阿南陸軍大臣の裕仁天皇陛下に対する畏敬、恭敬が軸になった作品なのであまり興味を引かない作品でした。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鍾
追記
石原莞爾風に述べれば、ミドウェイ海戦はアリューシャン作戦を中止してミドウェイに回し、米国機動部隊を撃滅する。攻勢終末点をサイパンにして、井上成美提督「新軍備計画論」による島嶼不沈空母化をサイパン、パガン、グァムに実施し、爾後来航するエセックス級機動部隊を待ち受ける。上手く行けば引き分けに持ち込めたとか。
もう一つ、今回このブログを作成するにあたり井田中佐のことを調べていたら、彼はあの事件後自決をせず、1955年に離婚して姓を岩田に戻し電通に入社。2004年に亡くなったとのことです。私はなんだか割り切れない気持ちになりました。
こちらは2015年版の予告編