レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「善き人のためのソナタ」ラズロ作戦、HGW XX/7、 完全監視を描いたサスペンススリラー…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「善き人のためのソナタ」(2006)です。

1984年東ベルリン、命を受け国家安全保障省(シュタージ)ヴィーズラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、上官と共に劇作家ドライマンの舞台劇を鑑賞する。ヴィースラーは主演舞台女優クリスタのファンなので握手をしてもらう。その後、上官と共にヘムプフ大臣ら面会をしてドライマンについて所感を述べラズロ作戦、即ちドライマンを24時間完全監視することになった。

彼のアパートに隠しマイクを仕掛け、屋根裏部屋に盗聴装置を置き、完全監視を始めるのだった。ドライマンは友人イェルスカの自殺を知り、義憤に駆られて"東ドイツ自殺者数について"の記事を独雑誌シュピーゲルに投稿しようとするのだが…

良い映画です。力作です。この映画の様に盗聴を描いた作品はハリウッド映画にもあります。例えば「フレンチコネクション」「シャーキーズ・マシーン」「カンバセーション/盗聴」等ありますが、これほど厳しく描いた映画はないと思います。そういう意味で物凄く志の高い作品になっています。全体にサスペンスたっぷりですが、特にシュピーゲル記事の為に東ドイツに持ち込まれた赤リボンを使用するコリブリ・タイプライターが登場する辺りから、更にサスペンスが増幅されてあのコスタ・ガブラス「告白」とか「寒い国から帰ったスパイ」の重々しいサスペンスが思い出されて、更にドイツ語の硬い響きがドラマに加わり、うーん、美しいの一言です。

いや、吃驚しました。独裁国家って、怖いというより凄いの一言。でもヴィーズラー大尉は、ドライマンと一緒に生活している女優クリスタのファンなので、ドライマン監視報告に手心を加えるようになってしまうこの辺りが、描写としては少し曖昧ですが面白くてね。ウィーズラーを演じるウルリッヒ・ミューエが素晴らしいですね。

但し、ラストは悲劇に終わります。クリスタが何もしなければ、うまく入ったのかも知れませんが。

ベルリンの壁崩壊後、ポスティングの仕事で食い繋いでいるヴィースラーがドライマンの新作小説「善き人のためのソナタ」を手に取って、ウィーズラー盗聴報告の略称"HGW XX/7"に賛辞が捧げられているのを知るラストも感慨深いと思います。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。         八点鐘

 

www.youtube.com

www.youtube.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com