レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「天国の門(完全版)」(1980)です。
この映画は、公開されたとき「災害的失敗作」とか揶揄されて製作会社ユナイテッド・アーティスツは倒産し、チミノ監督はこの作品以後色々と映画、「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」「シシリアン」等を監督しますが、往年のような力強さはなく失意のうちに2016年に亡くなってしまいます。今回は劇場公開版(149分)ではなくオリジナル版219分の印象をご紹介します。
映画は、ワイオミング州で1889年から1893年にかけて生起したジョンソン郡戦争と呼ばれる開拓移民と畜産会社との闘いを描いています。
ハーバード大学を卒業してジョンソン郡の保安官をしているエイブリル(クリス・クリストファーソン)は、大学時代の友人アーヴァインに会いジョンソン郡で起きている牛盗難行為に対して牧場主側があぶれ者を傭兵として雇い、開拓移民抹殺リストなるものを作成し、殺し始めると聞く。エイブリルは何とか阻止しようと米騎兵隊に助けを求めるが、そこにも牧場主側リーダーフランクの手が伸びていた…
まず、3時間半はやはり長いですね、でも劇場公開版より描写が緻密で良いですね。
この作品の美点はヴィルモス・ジグモンド撮影でしょう。本当に美しいと思います。この映画にただの西部劇ではない、歴史大作ドラマのような風格を与えています。
対して、この映画の問題点の一つはその歴史観でしょう。人によっては怒り狂うかもしれません。それより私はホン、特にエイブリルの描き方が問題だと思います。ヒーローらしくない、当時はまだニューシネマの終末期でしたから致し方ないと思いますが、もう少し感情移入できる人物に描いてくれないと、だからクリス・クリストファーソンは損をしていると思います。これは大問題だと思います。
でも、ラストの開拓移民と傭兵たちの攻防戦、ローマ戦法と呼ばれる戦術のシーンは迫力があり、なかなか見せてくれますが。そういう意味ではもったいない力作だと思います。いろいろ書きましたが、私は結構好きな西部劇です。ラストの攻防戦が迫力があってね、キャストもイザベル・ユペール、ジェフ・ブリッジス、クリストファー・ウォーケン等脇が素晴らしい映画と思います。
西部でのこういう武力衝突、このジョンソン郡戦争以外にリンカーン郡戦争という事件があってそれは「チザム」(1970)に描かれています。
ペキンパー監督「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」はリンカーン郡戦争の後日談を描いた映画でした。
このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。 八点鐘