レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「ワールド・オブ・ライズ」リドリー・スコット監督のエスピオナージスリラー・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ワールド・オブ・ライズ」(2008)です。

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リドリー・スコット監督と言えば、数少ない監督の名前で観客が入るスーパー監督の一人と言って良いでしょう。第一作「デュエリスト/決闘者(1977)」から最新作「ゲティ家の身代金」迄約四十年間、失敗作が殆どないのも彼の特色でしょう。

ハリウッドはとても厳しい処なので、スタジオと喧嘩して作品が台無しになったり、興行的に失敗すると干されたり大変なところです。

 

この作品「ワールド・オブ・ライズ」を劇場で鑑賞した時、ヨルダン情報部責任者ハ二を演じたマーク・ストロングがすこぶる良いが、全体的に地味なエスピオナージスリラーだと思いました。007シリーズ、ミッション・インポッシブルシリーズ等と比較して見劣りする作品だと。

正しく言えばジャンルが違います。

 

映画は、欧州で無差別テロが起こり、その首謀者アル・サリームをあぶり出す必要があり、CIAエージェント、フェリス(レオナルド・ディカプリオ)とホフマン(ラッセル・クロウ)が担当することになった。

なかなか尻尾を出さないアル・サリームを引きずり出す為、二人は架空のテロ組織を作り上げることにした。偽の死体を用意しトルコの米軍基地を偽装爆破して、架空のテロ攻撃を演出し、アル・サリームの動きを監視すると、架空のテロ組織にコンタクトし始めてきたが・・・

 

最近、この作品を鑑賞し見直しました。とてもテンポが良く、バランス良く出来ているのです。

当時、911テロで米国はアフガニスタン続いてイラクへ軍事介入し、その後アラブの春が起こり、色々な国が内戦状態に、そういう国際情勢の中、結構上手い立ち位置で今見てもおかしくない映画に仕上がっているのです。

あの「ゼロ・ダーク・サーティ」にはかないませんが。

 

映画は、アクションありのラブ・ロマンス仕立てにもなっていて、イラク人女性看護師アイシャ(ゴルシフテ・ファラハニ)の描き方が若干地味なのが惜しいと思うぐらいで、どちらかと言えば、もう少し派手気味に演出した方が、作品として良かったのではと思う位です。彼女、映画では地味ですが、ファションフォトではなかなかエキゾチックな美人なのに惜しい。

 

この映画が言いたいのは、こういうテロ対策には、イミント(画像情報)、シギント(通信信号情報)等より、ヒューミント(人間情報)が一番効果が良く、安上がりだということだと思います。やはり泥臭い諜報活動が一番なのですね。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。

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マーク・ストロング

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ゴルシフテ・ファラハニ

 

「グレイストーク」本場英国産の重量級ターザン映画ですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「グレイストーク  ターザンの伝説」(1984)です。

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ターザン映画と言えは、古くはジョニー・ワイスミュラーのターザン映画が有名ですが、私が、幼年の頃見た「ターザン  三つの挑戦(1963)」、あのボー・デレクが主演した「類猿人ターザン(1981)」、少し前ベトナムで鑑賞した「ターザン:REBORN(2016)」ぐらいですが、好きなジャンルの映画です。

 

でも、この作品は、「炎のランナー」で有名なヒュー・ハドソン監督の英国産ターザン映画ですが、普通のターザン映画とは違います。何と説明していいのかリアリズムとも違いますし、人類学、霊長類学的アプローチによるターザン映画と言った方が正しいかもしれません。

 

映画は、グレイストーク卿ジャック・クレイトン夫婦がアフリカに渡るところから始まります。広大な大邸宅、多くの使用人、壮大厳正な演出で、当時の覇権国である大英帝国の力強いタッチで描かれます。この辺りは英国人でなければ描くことは出来ないでしょう。

 

帆船が難破するが、クレイトン夫妻は助かり西アフリカで生活を始めるが、母アリスは息子ジョンを出産するが、産後の肥立ちが悪く死去、父クレイトン卿もゴリラに襲われ死亡し、ジョンは子供を失くしたメスゴリラによって育てられる。

 

ダルノー(イアン・ホルム)率いる探検隊は、土着部族に襲われ、隊員は殺戮されるが、彼はジョン(クリストファー・ランバート)の助けで生き永らえる。又彼は、近くで死去したグレイストーク卿夫婦の亡骸を発見し、その息子と確信し、英国へ連れていく決心をする。

 

英国では、グレイストーク伯爵(ラルフ・リチャードソン)とジェーン・ポーター(アンディ・マクダウェル)が待っているのだが・・・

 

大英帝国そのものを体現している様なグレイストーク伯爵をサー・ラルフ・リチヤードソン(「ドクトル・ジバコ」「オー!ラッキーマン」)が演じており、貫禄たっぷりの好演、素晴らしい。そう、映画の後半はグレイストーク伯爵の映画と言って良い。

 

その壮大なグレイストーク邸は、息を呑むような大邸宅(ロケ地はハットフィールドハウス)。ジョンはジェーンの助けを得て、人間社会に溶け込むのだが、やはり、限界を感じ、アフリカの大地を安住の地に・・・

 

と言うように、これは厳密に言えばハリウッドが製作していたターザン映画ではなく、人間ドラマになっています。そういう視点から見れば、大変良く出来た映画ですが、ターザン映画として見ると、こういう作り方やめて欲しいよねというタイプの映画です。

でも、何か愛着を感じる映画です。

 

ハドソン監督の「炎のランナー」もスポーツ映画とは言えない独特な風格を持った映画でした。私はこちらの作品「グレイストーク」の方が好きですが。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。       八点鍾

 

追記 類猿人の特殊メイクはリック・ベイカー氏が担当、その年のアカデミーメイクアップ賞を受賞しています。

 

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番外編「アラン・ドロン生誕85年記念祭」に参加しました。

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。

今日は、昨日東京で行われたチェイサーさん主催「アラン・ドロン生誕85年記念祭」のご報告をしたいと思います。

 

生誕記念祭はライブハウス GINZA TACTで行われました。12:30~15:30と三時間強のライブコンサートで、バトルス・ルコント監督「ハーフ・ア・チャンス」のダイジェスト映像、アラン・ドロン氏の松山訪問の秘蔵映像と時々行われるアラン・ドロンクイズを交えて、お待ちかね、シネマ・ライブによるアラン・ドロン主演映画音楽が始まりました。

 

 マリアンヌ・フェイスフルとアランドロン共演の映画「あの胸にもういちど」、「太陽は知っている」「個人生活」「太陽はひとりぼっち」「サムライ」「さらば友よ」「ゾロ」「ビッグガン」「シシリアン」「地下室のメロディ」「仁義」「冒険者たち」「太陽がいっぱい」等が演奏され、楽しさと懐かしさが一杯のライブでした。

 

特にフィリップ・サルドの音楽が素晴らしい「個人生活」、ジョバンニ・フスコのあのメロディ「太陽はひとりぼっち」はとても良かったと思います。

 

私が始めて見たドロン映画はアンリ・ベルヌイユ監督「地下室のメロディ」でした。と言ってもかなり幼かったので、ドロンが空調ダクトを延々と這いずるシーンとプールに紙幣が浮かび上がってくるシーンぐらいしか思えていませんが。

 

そんなことを思い出させてくれた、とてもとても素晴らしいライブコンサートでした。  

                               八点鍾

 

追記 

コロナ禍の中でしたが、参加してよかったと思います。

 

シネマ・ライブの曲ですが、皆さんのアンケートで決定していると聞きましたが、少しチェイサーさんの好みが入った方がよろしいのではと、私は思いました。

ラロ・シフリンの「危険がいっぱい」なんか聞きたかったな・・・

 

 

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                 危険がいっぱい

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個人生活

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太陽はひとりぼっち

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地下室のメロディ






 

 

 

 

「砂漠でサーモン・フィッシング」ラッセ・ハルストレム監督のラブコメディですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「砂漠でサーモン・フィッシング」(2011)です。

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ラッセ・ハルストレム監督の映画です。彼の作品では「サイダーハウス・ルール(1999)」「ショコラ(2000)」が有名でしょう。ベテランでなく名匠といったほうがいいでしょう。

 

映画は、英国と中近東の関係が良くないので平和的なプロジェクトを捜していた首相広報官パトリシア(クリスティン・スコット・トーマス)は、イエメンで鮭釣りをプロジェクトを探し出し、強引に進めることに。水産学者フレッド(ユアン・マクレガー)を引っ張り出して、イエメンの大富豪シャイフのプロジェクトを管理している投資会社のハリエット(エミリー・ブラント)と共にこのプロジェクトを進めることになった。

 

ハリエットは有能で、フレッドが要求する案件を処理して、プロジェクトは進み始め、イエメンの自然、ダムの有無、英国釣り協会からのクレームで天然鮭でなく養殖鮭を使用し、輸送用タンク等々ひとつずつ潰していく。が、反政府ゲリラがダムから無断放水をして、鮭用プールが潰されるのだが・・・

 

監督がラッセ・ハルストレムですから、手際よく纏めたウェルメイドのラブロマンスコメディとして良く出来た作品になっています。

特に面白いのはクリスティン・スコット・トーマス、この人とてもシックな役が多いので、コメディ的な役は不得意ではと思ってましたが、結構見せてくれます。

又、魚だけが趣味という小心なフレッドを演じたユアン・マクレガーも面白い。ホント、小心者で池に飼っている鯉に食パンの千切って投げているだけの男・・・

 

ラストも心地良くて。意外な拾いものと言ったら怒られるかもしれませんが。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。           八点鍾

 

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「エリジウム」マット・デイモン主演、新鋭ニール・ブロムカンプ監督のSF映画ですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「エリジウム」(2013)です。製作費オーバー1億ドルのSF大作です。監督は「第9地区」で名を上げたニール・プロムカンプです。マット・デイモン、他にジョディ・フォスターが共演しています。

 

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映画は、スラム化した地球と対照的に理想郷として軌道衛星上に建設されたスペース・コロニー「エリジウム」の確執を描いた物語です。ディストピアタイプのSF映画です。

 

こう書くと、なんだエドガー・アラン・ポー「赤死病の仮面」ですかと尋ねられれば、その通りと答えることになります。大まかなアウトラインはその通りですが、細かなディテールはかなり凝っており、その辺りがこの映画の見所になります。

 

延々と続く未来型スラム街、レイバンと呼ばれるV/STROLタイプの航空機、中にはエットーレ・ブガッティのロゴが付いたものがある。兵士たちが使用する高破壊力のライフル銃、手裏剣タイプの時限爆薬、携帯型電磁シールド等。そうそう改造版GT-Rもカッコよく登場します。

だから、「第9地区」でもそうでしたが、戦闘描写が迫力ありますが、かなりグロい。このような描写が好きな人はたまらないだろうが。

 

他に、デイモンが装着するエクソスケルトンと呼ばれる装置、映画の中では人の神経系に接合して使用するようになっています。現在、試作中の米陸軍のパワードスーツは装着タイプで、勿論日本でも介護施設用に開発されていたものが自衛隊用として開発されているとか。

最近、よく映画の中でお目にかかるので・・・「プロメテウス」「ロボコップ2」等

 

ディテールは面白いとしても、もう少しストーリーが・・・ 思うに最近の映像派監督は、あまりにも読書が少ないように思います。悪く言いたくありませんが。それ故、監督としての限界が、早く来るようにも思います。

この次の作品「チャッピー」も悪い作品ではありませんが、話として広がらなくて・・・ ウーン・・・

 

悪い作品ではありません。ディテールに凝っています。ですが、人間の描写は平板で・・・ジョディ・フォスターもアリシー・ブラガも可哀想な扱いで、もっと見せ場を作ってあげないと。

何も一人で脚本作らなくても、もっと上手い人と組んで共作でも映画が良ければOKだから。やはり、キューブリック監督が言うようにストーリー、良いストーリー。次は良いストーリーを作り上げて映画にして欲しいと思います。

 

最後に、デイモンが働く工場ですが、いくら地球全体がスラム化してもこんなに非安全な工場は問題だと思います。こんな工場で生産すれば、ろくなものが出来ません。

又、登場する仲間の作業者も安全作業に関する知識ゼロでこういう描写はいかがなものかと思います。

例えば、日本国内の従業員100名以上の会社、アセアンで稼働している日系会社にはこんな工場はありません。だから、工場側の非を出したいのであれば、もう少し別の方法で描写しないとまずいと思いますが。例えば、生体反応センサーの誤動作とか・・・

 

ちょっと今回は色々と書きましたが、作品としては悪くありませんので。次は、良いストーリーで素晴らしい作品をお願いします。

 

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。                 八点鍾

 

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エリジウムの造形はとても素晴らしい

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アクションシーンはとても上手い

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一流の演技者には見せ場を








 

 

 

 

 

 

「クイルズ」シャラントン精神病院での洗濯女マドレーヌとマルキ・ド・サドのお話ですが・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「クイルズ」(2000)です。 

 

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IMDb

あのサド侯爵が晩年幽閉されていたシャラントン精神病院での出来事を映画化した作品です。監督があの「ライト・スタッフ」「存在の耐えられない軽さ」のフィリップ・カウフマンです。

 

映画は、フランス革命時のサド侯爵(ジェフリー・ラッシュ)から始まります。冒頭、冷ややかな眼差しでギロチン処刑される貴族娘を見詰めるサド侯爵、彼は革命の本質を見抜いていたに違いありません。

 

十数年後、シャラントン精神病院に幽閉されたサド侯爵は、独房の中で愛欲小説を書き

洗濯女マドレーヌ(ケイト・ウィンスレット)がシーツと一緒に持ち出し秘密出版されていた。シャラントン精神病院はアッべ病院長(ホアキン・フェニックス)によって穏やかに運営されていた。

 

皇帝ナポレオンは、秘密出版を許さず、新しい病院長コラール博士(マイケル・ケイン)を送り込み、サド侯爵の秘密出版を潰そうとするのだが・・・

 

サド侯爵とシャラントン精神病院と言えば、あの「マーラ/サド(1967)」があります。この作品は、フランス革命について何がしかの知識がないとついて行けない映画で、昔、劇場で鑑賞した時は、もう苦痛以外何物でもないという代物。

対して、この作品はそういう知識はいりませんが、やはり、知らないより知っていた方が面白く楽しめると思います。たくさん知っているともう嬉しくてたまらない作品かもしれません。

 

このダグ・ライトが創作した戯曲は、本当に優れています。とても上手い。

時々、映画もう見るのを止めようと思う時があります。そういう時に限って、この様な作品が現れるのです、ホントに。弱いですよね、この手の映画。良く出来ていると、この手の映画を捜して捜して深みにはまってしまいます。

例えば、「薔薇の名前」、「相続人(1973)」、「溝の中の月」とか・・・

 

ジェフリー・ラッシュのサド侯爵も上手い、多分こんな人物だったとこちらが感じ入るぐらい良く演じています。悪役コラール博士のマイケル・ケインも本当に憎々しく演じています。でも、一番うまいのはケイト・ウィンスレットとホアキン・フェニックスでしょう。

 

シャラントン精神病院のセットも素晴らしく、でも、この作品万人にはお薦めできませんが、あのフランス革命時代がとてもとても好きな方には、太鼓判を押してお薦めします。

 

いや、フランス革命っていい時代ですよね。ドロとして、魑魅魍魎の人達が傑作な人物が一杯で、ホント知的好奇心を擽ります。日本だと、大東亜戦争前辺りになるのかな、硬軟色々な人物が一杯で、いや、良く出来た、又、色々な事を示唆してくれる面白い映画です。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。        八点鍾

 

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「冒険者たち」青春映画の決定版・・・

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「冒険者たち」(1967)です。

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この作品、昨日ご紹介した「ラムの大通り」のロベール・アンリコ監督作品です。思うに、日本の観客が一番好きなフランス映画ではないでしょうか?

映画は、簡単に言えば人生に挫折した男女3人が明るく宝探しに出掛け、大金を手に入れるのですが、やはり人生上手くいかなくて・・・

 

特に前半、騙されてパイロット免許を剝奪されたマヌ(アラン・ドロン)、高性能エンジン開発を生きがいにしているエンジニア、ロラン(リノ・ヴァンチュラ)、前衛彫刻家レティシア(ジョアンナ・シムカス)達が挫折し、人生再チャレンジの資金を得るために、コンゴ動乱(知らない人は「戦争プロフェショナル」見てね!)で、消息を絶ったレシプロ機(一財産を持った宝石商が搭乗していた)を発見し、一人一億フラン手に入れるのだが、それがもとで悲劇が彼らに・・・

 

映画は大変良く出来ています。多分、この映画が最初だと思いますが、男二人と女一人の組み合わせがとても上手い。ジョアンナ・シムカスの自然体の演技が素晴らしいと思います。彼女に曳かれて、ドロンもヴァンチェラも別の演技を披露されたように思います。ジョージ・ロイ・ヒル監督「明日に向かって撃て」はこのスタイルを模倣したものと思います。

 

本当に屈託なく宝探しに行き、苦労なんかまったく描くことなく、まるで遊びの延長の様に上手く描いています。ちょっと見ていて恥ずかしくなるぐらいですが。

例えばジョン・ヒューストン監督「黄金」では、互いが疑心暗鬼になって破滅するのだが・・・

 

悲劇が襲い仲間が亡くなり、分け前を持って親族を訪ねる辺りから、俄然ノワール色が濃厚になって、私の目が刮目してきます。やはり、フランス映画はこう来なくては。

 

この辺り、とてもいい雰囲気です。メルセデス300Eカブリオレに乗ってフランスの片田舎タンプル村を訪ねます。そして、ㇾティシアの故郷、イクス島の商店で甥を見つけ、カバンから現金(ラルジャン)を渡す。涙物の良いシーンです。

対岸遥か彼方に要塞島を見ることが出来る。が、生き残った者に再び悲劇が襲うのだった・・・

 

この映画の原作「生き残った者の掟」原作者ジョゼ・ジョバンニは、この映画のソフトさを嫌い、もう一度ジョバンニ自身で映画化しています。ビデオで鑑賞しましたが、重く観念的で面白くありませんでした。私としては「ベラクルスの男」の様な映画を期待していましたが。

 

私は、今回この作品をBDで鑑賞しました。それには、特典映像として2006年、カンヌ映画祭を訪れたジョアンナ・シムカスのインタヴューが付いており、この作品の想い出を語ってくれました。

 

要約すると、

ゴダール映画の脇役数本出ただけで、この作品に主演したので大変でしたが、共演のドロン、ヴァンチェラが優しく対応してくれたので大変楽しく思い出です。

その時、演技が未熟だったので同じ演技が出来なくて苦労しましたとか。ハリウッド映画「失われた男」に主演して、共演者シドニー・ポアチエが誠実だったので結婚し、ショービジネスから引退しました。その時26歳でした。         八点鍾

 

追記

このブログでのフランスの地名は、"居ながらシネマ"のサイトを参考にしました。

 

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