レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「愛のメモリー」ヒチコック・サクセサー(後継者)デ・パルマ監督の記念すべきオマージュ映画ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「愛のメモリー」(1976)です。

いや、この映画、ヒチコック映画が好きな人には堪らない作品ですね、特にあの傑作「めまい」にオマージュを捧げた映画なのですから。勿論、ヒッチタッチを存分に利用して、「めまい」風なストーリーをポール・シュレーダーと作り上げて。

映画は、1959年のニューオリンズから始まります。不動産会社の経営者マイケル(クリフ・ロバートソン)は結婚10周年記念パーティの席で、何者かに妻エリザベス(ジュヌヴィエーブ・ビジョルド)と娘エイミーを誘拐されてしまう。警察の捜査も空しく、犯人と共に二人は亡くなってしまう。マイケルは妻と初めて出会った聖堂を模した二人の墓を建てるのだった。

十数年後、共同経営者ロバートとイタリア、フィレンツェを訪れたマイケルは、聖堂を訪れ、宗教画を修復している妻そっくりの女性サンドラに出会うのだった…

そうなんです、このストーリーからあの「めまい」にそっくりだなと思われる方もいるでしょう。そうなんです。でも、彼なりにうまく纏めており、又上手くヒッチタッチを利用しているので好きな人には堪らない映画になっています。例えば、長回し、パンフォーカス、目線アングル、スローモーション等多用して。おまけに、「めまい」が130程度の作品なので鑑賞には心構えが必要ですが、この映画は上映時間も100分程度なのでテンポも良く、本当に肩の凝らない作品です。

おっと、忘れていました。音楽があのバーナード・ハーマンなのですから、本当に雰囲気が出ており、楽しい作品になっています。

そして、ラストショットは、あの被写体を中心にカメラが回るあれです。ハッピーエンドなのも素敵です。

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。      八点鍾

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「地下室のヘンな穴」おフランス製のヘンなコメディ映画ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「地下室のヘンな穴」(2021)です。

時間が空いたので鑑賞しました。12時間進んで3日間若返る、これはねじれた空間のウォームホールのお話かなと思いました。ほら、ロバート・ゼメキス監督「コンタクト」の廉価版の様な作品かなと思いましたが、全然違います。もっとチープ、卑猥、こじんまりとした映画です。フランス人にはSF映画は難しそうですね。

ある夫婦が家を買い、その家の地下室にヘンな穴があり、それをくぐり抜けると12時間進んで、くぐった本人が3日間若返る話と夫婦の夫の会社社長が日本で電子ペニスを取り付けて、それがシューティングレンジで転んだことで不調になって…と言うお話の二本立てになっています。その社長をブノワ・マジメルが演じています。

コメディですが笑いの質が違うので、私にはちょっとな映画です。フランスでは凄く当たったそうです。それは結構な事と思いますが、この約75分程度の映画というよりTV作品のようですが、こういう映画を見ると映画の同一料金体系を変える必要があるのではと思います。この作品よりもっとお金のかかった映画と同一料金とは…

話を元に戻して、ノワールスリラー、戦争アクションでお目にかかるブノワ・マジメルとは違う彼にお目にかかることが出来ます。彼、こういうコミカルな演技もできるのですね。結構笑えます。

よく言えば不条理スリラーとも言えないことはない、この映画は。ビギナーズ・ラックなような作品で。例えば、低予算で映画を作りたい人などこの映画は、何がしか参考になるかもしれませんが。

それぐらいですかね。ラストショット、奥さんより犬コロと言う事なんでしょう。

ご興味のある方はどうぞ。私が見逃した何かを見つけることが出来るかもしれない。

                               八点鍾                      

 

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「怪奇と幻想の島 」ジョン・ファウルズの小説「魔術師」を映画化した作品ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「怪奇と幻想の島」(1968)です。日本では公開されていません。テレビで放映されたことがあるとは聞いていますが。

映画は、ニコラス(マイケル・ケイン)が同棲していたアン(アンナ・カリーナ)から逃げるようにしてギリシャ、フラクソス島へ英語教師の仕事の為に船で旅をしているところから始まります。それはニコラスの前任者が自殺した為で、学校の近くある入り江の邸宅に住んでいるコンヒス(アンソニー・クイン)と知り合い、彼はあるゲームをしようとニコラスに持ち掛けるのだった…

不勉強にも、ジョン・ファウルズは、あのウィリアム・ワイラー監督「コレクター」(1965)の原作者としか知りませんでした。でも、英国ではポストモダニズムの父と批評家から呼ばれるほどの大作家で、この小説はその代表作と言えるでしょう。

でも、この映画、原作者自ら脚本を担当しているにもかかわらず、巷では、最低の映画化作品とか、最大級の災害とか言われていましたが、今回、この作品を鑑賞して、いや結構良く出来ている作品だ感じました。私は原作を読んでいないので、今度読んで見ようと思っています。それぐらい私には、面白く興味深い作品でした。正直、何が最大級の災害だと思います。但し、コンヒスが登場するまでが少し退屈ですが…

ほとんど予備知識なしで映画を見たので、例えば「探偵/スルース」(1972)「シーラ号の謎」(1973)「デストラップ 死の罠」(1982)の様な作品かなと考えていましたが、もう少し重い心理サスペンスで、簡単に言えば"劇中劇"の映画です。でも、その中に心理療法、映画製作、ギリシャで起こった戦争犯罪等上手く嵌め込まれており、一筋縄で行かないストーリーを上手く纏めていると思いました。

又、美しいがあまり記憶に残らないと言うか拉致される役が多いキャンディス・バーゲンがなかなか良く、加えてゴダール作品ではつまらないアンナ・カリーナも結構良いのに驚きました。監督は「いつか見た青い空」のガイ・グリーン。

カレル・ライス監督「フランス軍中尉の女」も原作がジョン・ファウルズだそうなので近日中に鑑賞、ブログにアップしたいと思います。興味を持たれた方は、ぜひ鑑賞して下さい。意外な拾い物と思われることでしょう。

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「ブレット・トレイン」裏切り血の復讐をのせて戦慄の弾丸列車が京都に向かう映画…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ブレット・トレイン」(2022)です。

レディバグ(てんとう虫)と言うジョブネームの男(ブラッド・ピット)が引き受けた仕事、それは新幹線に乗ってブリーフケースを奪う簡単なものだった。が、その新幹線には、ノリノリの仕事人と言うかヒットマン、殺し屋が乗り合わせており、レディバグに襲い掛かる。彼は逃げ切ることが出来るのか…

笑えます、コテコテのハリウッド製ノワールコメディ映画です。但し、流血たっぷりですが、でも描写は抑制されていますのでビックリすることはありません。

昔から映画と列車の相性は良く、昔から好い作品が一杯あります。「レディヴァニッシュ」「北北西に進路を取れ」「見知らぬ乗客」「オリエント急行殺人事件」「大列車作戦」等々。この作品はアーサー・ヒラー監督「大陸横断超特急」(1976)に感じが似ていますね。

監督が「アトミック・ブロンド」のデヴィッド・リーチなのでアクションのキレは良いですが、お話がテンコ盛りでテンポが速いので少し混乱気味になっている嫌いがあります。もう少し整理するともっと良くなるのでは。

原作は伊坂幸太郎「マリアビートル」、時代は変わりましたね。こういう日本を舞台にするハリウッド映画が登場するなんて。思い返せばタランティーノ監督「キル・ビル」辺りからでしょうか。変な日本描写というか、突っ込み処満載ですが、それが又味わいになっているところが良いですね。ブラッド・ピットはいつも通りですが、真田広之、ジョーイ・リン・キングが良いですね。

 

さあ、頭カラッポにして戦慄の弾丸列車に飛び乗って下さい。楽しめること間違いありません。                                                                          八点鍾

 

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「チャッピー」ニール・ブロムカンプ監督SF映画第三作ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「チャッピー」(2015)です。



近未来。南アフリカ、ヨハネスブルグ。高い犯罪発生率を減らす為、政府は治安維持ロボットの導入を決定し兵器メーカー テトラバール社から治安維持ロボットが街に配置されると治安は改善された。

ロボット開発者ディオンは、このロボットにAI装置を導入した新型を考えていたが、そのアイデアは会社から却下される。が、諦めずに壊れたロボットを修理してAIを組み込んだ"チャッピー"を作り上げるが、彼とチャッピーはギャング3人組に拉致されて…

「第9地区」で名を上げたプロムカンプ監督の第三作になります。映画はロボット、パンク、ポリスアクションをミックスした作品で、良く纏まっていますが、何というかこの作品の弱点はキャストが弱すぎると思います。南アフリカの人であれば問題ないかもしれませんが。

勿論、シガニー・ウィバー、ヒュー・ジャックマンも登場しますが、どちらかと言えば脇に近く、肝心のニンジャ、ヨーランディを演じるラップグループ"ダイ・アントワード"のお二人さん、この日本ではなじみが薄くて今一歩のれません。前作もそうでしたが、ハリウッド映画だからインターナショナルと言うことを考えて欲しいと思います。

もう少し強力な主演女優を配した方が、興行成績も良くなるのではと思いますが。但し、ラストのロボットアクションも含めて「パシフィック・リム」程ではありませんが、結構楽しめます。

新作「デモニック」(2021)もひっそりと公開されたようですが、まだまだ映画センスは健在なので、めげずに頑張って欲しいと思います。

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「サクリファイス」核戦争を描いたタルコフスキー監督の遺作ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「サクリファイス」(1986)です。

スウェーデン、ゴトランド島でひっそりと暮らしているアレクサンドル一家。美しい景観に囲まれた処で、その日はアレクサンドルの誕生日。彼は息子と一緒に松の木を植えた。家族は余り仲がいいようではなかったが、やがて核戦争が勃発する。TV放送は途絶え、アレクサンドルは神に祈り始めるのだが…

この手の映画は、その昔スタンリー・クレーマー監督「渚にて」が有名ですが、アンドレイ・タルコフスキー監督は全く別のアプローチで、核戦争の恐怖を描いています。

でも、製作された当時ソ連は経済的に困窮しており、米国がSDI計画で揺さぶりをかけ右往左往していたソ連はやがて崩壊しました。

他にフランスの人口統計学者エマニュエル・トッド、日本ではテレビ放送であのロッキード裁判を揶揄した小室直樹氏がソ連邦崩壊を予言しており、そんな中でのこの作品、当時は何かピンときませんでしたが、ウクライナ侵攻での戦術核で威嚇しながらでの現在、いやなかなか今日的な映画だなと再認識した次第です。

「ロシアを決して信用するな」とタルコフスキー監督からのメッセージが濃密にスクリーンから漂ってきます。その通りなのでしょう。私は良く知りませんが、ソ連時代に色々な事があったのでしょう。

この映画は一般の観客には馴染みません。観客を選ぶ映画です。でも、好きな人にはもう堪らない映画でしょう。「映像の詩人」と言われたタルコフスキー監督、長回し、独特のズーム撮影、特殊な銀残しのようなモノクローム撮影、独特な構図、スローなテンポ、ハリウッド映画とは真逆な映画です。でも、堪らない人には堪らない作品だと思います。核戦争勃発前後は珍しくサスペンスタッチで…うーん、美しいです。

個人的には「ストーカー」と「鏡」が好きですが。この様なタイプの映画監督は、もう出て来ることはないと思います。

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追記 撮影を担当したスヴェン・ニクヴィスト(「叫びとささやき」「ファニーとアレクサンデル」)は大変だったと思います。

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「ザ・ディープ」映画よりドナ・サマーの妖艶なディスコミュージックが有名な作品ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ザ・ディープ」(1977)です。

もう夏も終わりなので夏らしい作品ということで、この作品を選んでみました。十何年ぶりに鑑賞しました。原作があの「ジョーズ」のピーター・ベンチュリーなので、「ジョーズ」の続編ではありませんが、それらしい雰囲気で宣伝をしており、又、あのディスコクィーンのドナ・サマーの「Down Deep Inside」も盛り上げて…

映画は、バミューダ諸島にハネムーンに来たデヴィド(ニック・ノルティ)とゲイル(ジャクリーヌ・ビセット)がスキューバダイビング中に沈没船を発見し、そこでメダルとあるアンプルを見つける。彼らは、それをトレジャーハンターのトリース(ロバート・ショー)に見せると、メダルとは大したものではないしと言われるが、彼はアンプルを盗んでしまう。デビィド達は帰り道に何者かに襲われ、おまけにデュポンと言う男が現れ、アンプルを見せて欲しいと言ってくるのだった…

当時、劇場で鑑賞した時は冴えない海洋アクション物だなと言う印象でした。監督はあの「ブリッド」「マーフィの戦い」「ジョンとメリー」のピーター・イェーツというのに。但し、アル・ギディングスとスタン・ウォーターマンの水中シーンの撮影は中々見事でしたが。個人的には沈没船のセットにもう少しスケール感が欲しいと思います。

でも、今回再び鑑賞するとそんなに印象の悪い映画ではないことに気付きました。でも、スピルバーグ監督「ジョーズ」には及びませんが。何分この映画「ザ・ディープ」は良く纏められていますが、残念ですが映画的興奮が余りありません。

例えば、「ジョーズ」では、あのタイガーシャークに一番銛を打ち込むシーン前後の描写がとても優れています。あのような感動があればもっと良い作品になると思います。

主演では、何時ものように"戦う男"を演じたロバート・ショーがとても良く、ジャクリーヌ・ビセットは悪くありませんが、もう一つですね。

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追記 ピーター・ヴンチュリー原作映画がもう一本あります。「アイランド」(1980)と言う作品で海賊が出て来る映画だった思います。マイケル・ケインが主演でラストのマシンガン大乱射が印象的な作品でした。

ピーター・イェーツ監督作

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以下ロバート・ショーの代表作

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