レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「鍵」名匠キャロル・リード監督の戦時下の男女心理描写を丁寧に描いた作品ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「鍵」(1958)です。

 



1941年英国。カナダ陸軍所属デビッド(ウィリアム・ホールデン)は志願して曳航船の船長に任命された。彼は旧友クリス(トレバー・ハワード)に会い、彼のアパートでイタリア系の魅力的な女性ステラ(ソフィア・ローレン)を紹介される。曳航船の仕事は、独軍の攻撃を受けた英貨物船の救出、燃え上がる貨物船を消火して曳航して港まで連れ帰ることで思った以上大変な仕事だった。クリスはある時デビッドに鍵を渡した。もし俺が帰らなかった時ステラのことを頼むと言い残して。そして彼は帰ってこなかった…

あの名作「第三の男」の監督キャロル・リードの戦時下の男女心理描写を描いた作品で、とても良く出来ていると思います。思いの外面白い映画でした。

この映画の見所は、曳航船が遭遇するドイツ空軍Ju88爆撃機、独海軍潜水艦等結構迫力ある戦闘シーンを見せてくれます。特撮シーンもあり当時としては良く出来ていると思います。

でも、見所はやはりステラを演じるソフィア・ローレンの美しさでしょう。彼女が二十代前半頃の作品で、本当に息を呑むほど美しいと思います。加えて、ステラの洋箪笥の中には男物の上着が何着かあり、そういう描写が戦時下の苦しさをサラリと現わし、何とも言えない雰囲気を醸し出て昨今にはない描写だと思います。

又、製作者があの「ナバロンの要塞」のカール・フォアマン、撮影オズワルド・モリスなので、何か隠し味の様な感じで英国伝統の冒険映画の様な雰囲気もあり、私にとっては嬉しい映画になっています。うーん、美しいです。

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。             八点鐘

 

追記 他に脇役で、オスカー・ホモルカ、バーナード・リーがチラリと登場しています。このDVD、低価格で古い映画ですが、クライテリオン製と言ってもいいくらい画質も素晴らしく、これがとても良い印象を与えてくれました。このくらいの画質だと古い映画もどんどん紹介したくなります。

 

www.youtube.com レアな作品なので良い予告編がありません。ムービークリップでご勘弁を

 

wedplain15.hatenablog.com

 








「涙するまで、生きる」カミュ著「客」を映画化した作品ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「涙するまで、生きる」(2014)です。

1954年冬。アルジェリアがきな臭く成った頃、数年前に妻を亡くしたダリュ(ヴィゴ・モーンセン)は山間部の小学校で教師をしていた。そこにアルジェリア人殺人犯モハメドを連れた憲兵が現れ、隣町まで護送することを頼まれる。ダリュは断るのだが、頼み込まれ仕方なくモハメドと旅立ったのだった…

カミュ著「客」を映画化した作品です。監督・脚本はダビド・ホールホッフェン、手堅く纏めています。映画の最大の美点は、アルジェリア山間部の厳しい風景でしょう。本当に美しいです。人が生活するには厳しい場所ですが、その美しさといった息を吞むほどです。ヴィゴ・モーンテンセンの渋い演技もとても良いと思います。

但し、この映画を見る前にバンデデシネ版「客」を見ていたので、この映画かなり原作から乖離が甚だしく、又良いエピソードを挿入していればマルですが、ALN(アルジェリア解放戦線)に拘束されたり、フランス軍に助け出されたり、加えて鉱山町で色々と遊んだりとありきたりなので、私は少し失望しました。

原作はそんなエピソードは無く、ダリュがモハメドと共に隣町へ行くのだが途中で好きにしろと言わんばかりにほっぽり出して小学校に戻る。教室の黒板に"俺達に何故渡さなかった。このことは忘れないぞ"とフランス語で書き殴ってあり、そこで終わるというもの。映画にはこのシーンはありませんでした。前述した様に、ラストシーンがないと気の抜けたビールの様で…

こんな感じなので、カミュが大好きな方にはちょっとね、そうではなく、アルジェリア山岳地区の厳しい自然を堪能したい方には良い映画だと思います。興味を持たれた方は是非ご鑑賞ください。

でも、怒られるかもしれませんがマーク・ロブソン監督「名誉と栄光の為でなく」よりいい映画だと思います。

このブログ作成にVOD(アマゾンプライム)にて鑑賞しています。                 八点鐘

 

www.youtube.com

 

追記 暴力革命で政権奪取するのは良いですが、その政権には経済通の人材がいないと国民が大変です。ただただ政権奪取したいだけのあれば、一番被害を被るのは国民だと思います。次は国民のお腹を満たしてやらないと。

例えば、私が一時期仕事をしていたベトナムでも政権奪取後、経済通の人材がいなくて大変だったと聞いています。サイゴン陥落の少し前までTVを製造していた松下電器は、工場を閉鎖して日本へ帰りました。が、1993年頃松下本社へベトナムから手紙が届き、差出人は昔松下工場で働いていた現地支配人からでした。吃驚したそうです。

松下側も工場を再開したい事もあり、責任者をホーチミン空港へ送り出し、二人は感動の再会だったそうです。国側も工場用地その他を準備していた様で、上手く工場生産が進んだと聞きました。この手のプロジェクトが一つ上手くいくと我も我も続くんですね。こういうことが理解できない人がトップにいると政権奪取後の国民は大変でね…

「レッド・プラネット」あのスコット監督「オデッセイ」とよく似たの映画ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「レッド・プラネット」(2000)です。

21世紀、地球は深刻な環境汚染に見舞われて、最後の手段として火星をテラフォーミング(惑星改造)することになった。氷のある火星の極地に藻を送り酸素を生成する計画だった。が2050年、計画通りに酸素レベルが育成されていたが突然落ち込み、理由は不明だった。調査の為、宇宙船マーズ号が派遣されるのだが…

火星を舞台にしたSF探検映画ですが、水準的な仕上がりでまあ楽しめる映画だと思います。同時期のデ・パルマ監督「ミッション・トゥー・マース」と同様だと思います。

この手の作品ですとスコット監督「オデッセイ」が群を抜いて良い仕上がりだと思います。違いは、ホンのディテールの差だと思います。一人残されたマークは、食糧問題、地球との通信、ラスト母船ヘルメス号とどうランデブーするかと言う問題を丁寧に描写しています。

対して、この「レッド・プラネット」はホンが雑な感じがします。もう少し丁寧に描写すれば、なかなか良い仕上がりになったと思いますが。探査ロボットAMMEの扱いなんかもったいないと思います。但し、ラスト宇宙船マーズ号のレスキュー装置は中々良いなと思いましたが。そういう意味で、ちょっと勿体ない映画でした。共演のキャリー=アン・モス、テレンス・スタンプもなかなか頑張っていましたが。

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。           八点鐘

 

追記 監督はCM監督出身のアントニー・ホフマン、興行成績が悪かったので又CM業界に戻ったとのこと。大変でしたね。もう一回ぐらいチャレンジさせてあげれば良かったのに。

 

www.youtube.com

www.youtube.com

 

wedplain15.hatenablog.com

www.youtube.com

                                     ミッション・トゥー・マース予告編

「最後のサムライ ザ・チャレンジ」フランケンハイマー監督らしい骨太のサムライ映画…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「最後のサムライ ザ・チャレンジ」(1982)です。

吉田家に伝わる名刀二振りの一つが先の大戦で行方不明となるが、吉田徹(三船敏郎)は米国にあることを知り、それを取り戻し日本へ持ち帰るために米国でリック(スコット・グレン)を雇い日本へ入国した。が、その名刀を狙い、実弟吉田秀夫(中村敦夫)がリック達を襲撃した。リックは辛くも逃げ遂せた。リツクは、その名刀の由来、又日本人の武道に対して考え方に共鳴して宿敵吉田秀夫との対決に力を貸すのだった…

あの「影なき狙撃者」「五月の七日間」「大列車作戦」「グランプリ」等60年代のフランケンハイマーは凄かったが、80年代は作品その物も緩みがちで、この映画も少しその傾向がありますが、まだ好い方だと思います。

この映画、三船敏郎、中村敦夫、溝口精二、稲葉義男等が登場して京都を舞台に大立ち回りが凄いんです。勿論、贔屓のスコット・グレンも日本刀を振りかざして斬って斬って斬りまくるのですから。うーん、美しいです (笑い) 。

撮影が岡崎宏三なので、又良いんですね。日本の伝統美を知っているので。一例を上げれば、竹林で竹を切るシーン等溜息が出るほど美しくて…

ラスト、吉田秀夫私邸(京都国際会館)での大立回りは、笑いが込み上げる程痛快無比なアクションになっています。ワゴンセール等でお見掛けしたら、ニヤリとして迷うことなく取り上げて下さい。楽しいですよ。

このブログ作成にBD輸入版を鑑賞しています。現在国内盤は無いと思います。 八点鐘

 

             

www.youtube.com

www.youtube.com

「マダム・ウェブ」サスペンスミステリータイプのマーベル映画ということで鑑賞しましたが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「マダム・ウェブ」(2024)です。

 

 

救命士カサンドラ(ダコタ・ジョンソン)は、橋で事故を起こした自動車から運転手を救出する時に、一緒に川の中に落ち臨死体験をする。その時に、彼女の中に眠っていた超能力、数分前の出来事を見ることが出来るようなった。

彼女の母は、その昔ペルーで新種の蜘蛛の採取をしていた時に噛まれたことに起因する。母はそれが原因で亡くなり、母の胎内にいたカサンドラはそれによって超能力を持ったのだった。カサンドラ(キャシー)は、それ以後三人の若い女性が何者かに襲われる幻覚が脳裏に繰り返されるようになり、その原因を探り始めるのだが…

あくまでも私個人の意見ですが、この手のコミック物は好きではありません。何でもありの世界なので、どのようにでも物語が作ることが出来ます。サスペンスミステリータイプの作品と言うことで久々に覗いてみましたが、やはり…でした。

何でもありと言う世界なのでもっともっと弾けたら面白くなったと思います。ラスト、ワルのエゼキエルとの対決もあの「ハイランダー 悪魔の戦士」の如く弾けてくれたらと願っていましたが、その願いも空しくガッカリしましたが、それはそれ、全体に手堅く纏めているので、普通の方は楽しめるのではと思います。

この映画、デ・パルマ監督「フューリー」のようなところもありますので、その手の映画を得意の方が担当すると良かったかもしれません。この女性監督S・J・クラークソンさんですが、彼女の映画スタイルとこの映画は余り合ってない様に感じます。

次回作を期待したいと思います。                   八点鐘

 

www.madame-web.jp

 

wedplain15.hatenablog.com

 

「エディ・コイルの友人たち」ピーター・イェーツ監督の日本未公開ノワールスリラーですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「エディ・コイルの友人たち」(1973)です。日本未公開作品です。

 

エディ・コイル(ロバート・ミッチャム)は、ケチな泥棒で些細なことから警察に捕まり、数年の懲役刑に直面している。ATFのフォーリー捜査官にケチな情報を漏らして懲役刑をチャラにして貰うことを考えている。巷では、武装強盗団が銀行幹部の家族を拘束して、銀行強盗を行うことが流行っていた。フォーリー捜査官はこの武装強盗団を何とか逮捕しようと焦っており、コイルに何がしかの情報を要求するのだが…

あの「ブリッド」で名を上げたピーター・イエーツ監督のノワール・スリラーです。なかなか渋いノワールスリラーですが、アクションも少なく地味な作品なので、日本で公開されなかったと思います。

キャストも地味で、ピーター・ボイル、リチャード・ジョーダン、ミッチェル・ライアン、スティーブ・キーツとなかなか良いんですが、アクションも少なめで、やはりこれだと少し日本公開は辛いですね。

但し、武装強盗団の描写等とても良いんですが、ラストをもう少しアクションで盛って貰わないとね。これだと皆肩透かし食った、と吠えるでしょうね。私は、これはこれで良いかなと思いますが。

音楽担当がデイブ・グルーシン、なかなかいいスコアを書いています。美しいです。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。             八点鐘

 

追記 やはり私は「ニンフォマニアック」の様な作品ではなく、この手の作品が良いですね。何かほっとします。この映画は、その昔水曜ロードショーだったかな一度だけ放映されたのを憶えています。残念なことに見損ない、その後日本国内では、DVDは発売されていたのでずっとDVDを捜していました。

 

www.youtube.com

www.youtube.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

wedplain15.hatenablog.com

 

 

「ニンフォマニアック Ⅰ/Ⅱ」目を覆うばかりの尖がり過ぎた問題作ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ニンフォマニアック Ⅰ/Ⅱ」(2013)です。

セックス依存症のジョー(シャーロット・ゲンズブール)は、薄汚れたビルの裏に倒れていた。そこを通りかがった老年のセリグマン(ステラン・スカルスガルド)は彼女を拾い、自分のアパートに連れて行った。彼女をベッドに寝かしつけ、介抱すると彼女は徐々に元気を取り戻し、彼女の奔放な過去を語り始めるのだった…

映画をよく見る人には、苦手な映画監督というか生理的にダメと言う監督があると思います。私の場合、ミシャエル・ハネケとかロバート・アルトマン辺りがそうですが、このラース・フォン・トリアー監督もこの作品辺りからそんな感じになりました。

その昔、「ヨーロッパ」「奇跡の海」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の頃はそんなこと無かったのに、この映画は尖がり過ぎて見ているのが苦痛です。まあ、わざとそういうに撮っているのだと思いますが、もう痛々しいを通り越しています。

映画は、しっかりとセックス依存症の女性、それに絡み合う生活環境、友人、犯罪等を丁寧にカリカリに乾いた描写しているので、何か残念な気がします。いい意味で観客を挑発しているのでしょう。でも、これだと観客が逃げて行ってしまうように思います。まあ、これが俺の映画だとトリアー監督は胸を張っているのだと思います。

この手の描写が堪らない人には、物凄いご馳走なのかもしれません。私は駄目ですが。一例が"abortion(堕胎)"のシーン、思わず目を覆いました。観客を選ぶ映画になっています。興味を持たれた方は是非ご覧ください。話のタネには良いかもしれません。

即物的に、カメラを被写体に向けて捉えているので、官能性等すっからかんである意味凄いと思います。そういう意味で美しいと思います。

シャルロット・ゲンズブールは体当たりで演じています。凄いと思いますが、私はエロ爺を演じたステラン・スカルスガルド、初めてスクリーンで見たのは「存在の耐えられない軽さ」でした、受けの演技でなかなか巧いと思いました。でも、ガードが甘いなと思いましたが…

このブログ作成にBD版(輸入ディレクターズカット版)を見ています。   八点鐘

 

追記 この映画ではフィボナッチ数が登場します。このシーンには笑えましたが。

 

www.youtube.com

 

wedplain15.hatenablog.com