レタントンローヤル館

主にサスペンス映画のお話

「囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件」ドス・パルマス誘拐事件を描いたイザベル・ユペール主演の映画ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「囚われ人 パワラン島観光客21人誘拐事件」(2012)です。

 

2001年5月27日フィリピン、パワラン島のリゾートでソーシャルワーカーをしているテレーズ(イザベル・ユペール)とリゾート客20名はアブ・サヤフ武装集団に拉致された。誘拐された人の多くはフィリピン人だか、テレーズを含めて数名が外国人だった。小さな小舟で洋上を進み、やがてラミタンに到着しその地の総合病院を占拠するアブ・サヤフ、フィリピン政府は歩兵部隊を派遣して対応するのだが…

ドス・パルマス誘拐事件を描いた映画です。2001年と言えば仕事でシンガポールに駐在して射出成形機の営業をしていた時、こんな事件が起きていたとは、私は知りませんでした。

映画は真摯に製作された作品で、この手の映画が好きな私ですがドキュメンタリータッチ且つリアリズム重視の作り方で、淡々と描かれており、悪くはありませんがそんなに面白くありません。

理由は、映画的興奮に欠けているからです。例えば、作り方によってはあの「ゼロ・ダーク・サーティ」と同じぐらいの魅力的な映画にすることも可能だと思います。勿論、ジェラルド・バトラー氏の登場が欠かせませんが。

一番の見せ場「ラミタン包囲戦」も淡々と描かれており盛り上がりに欠けます。イザベル・ユペールも悪くありませんがやはりこの手の映画には不向きですが、その志は認めるべきだと思います。

映画は2002年6月7日のバーナム夫妻解放作戦まで描かれています。テレーズは生還しますが、マーティン・バーナムは銃撃されて死亡、妻グラシア・バーナムは足を負傷しますが生還します。この手の映画が大好きと言う方、イザベル・ユペール大好きと言う方にはお薦めだと思います。それ以外の方はスルーされた方が良いと思います。

このブログ作成にVODにて鑑賞しています。            八点鐘

 

 

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「黒い罠」巨匠オーソン・ウェルズの素晴らしいノワール・スリラーですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「黒い罠」(1958)です。

   

 

メキシコ国境地帯にあるロス・ロブレス、新婚旅行の途中に立ち寄ったメキシコ麻薬捜査官ヴァルガス(チャールトン・ヘストン)と妻スーザン(ジャネット・リー)は、乗用車爆破事件に出くわす。搭乗していたのは地元有力者リネカー氏だった。米国側捜査責任者はクインラン(オーソン・ウェルズ)で、色々と噂の多い男だった。ヴァルガスは仕方なく捜査に協力するのだが…

オーソン・ウェルズと言えば、あの映画史の残る傑作「市民ケーン」がありますが、この作品も凄いと思います。冒頭4分程の長回しが凄いし、プロットの展開も、あのヘイズ・コードギリギリの物語展開でびっくりしました。

加えて、チャールトン・ヘストンをメキシコ人捜査官を演じさせるなんて、これも凄い。又、ウェルズ自身も物凄く凝ったいで立ちで登場し、楽しそうに演じているなんて、素晴らしいの一言。

加えて、演出スタイルも当時としてはとても斬新だったのでしょう。最近の映画を見ている様にカメラを縦横無尽に動かして画面が生き生きしている感じ。構図も良く奥行きのある凝った撮影で、本当に凄い男だなと感心しました。でも、この手の映画は一般受けは難しいでしょうが、私にとって"俺の好きな映画だ"と叫びたくなるほど。

ラスト、クインランの告白を盗聴しテープに残すというスタイルも当時としては物凄い先進的な方法で、これも驚きました。もう一つ、この映画、マレーネ・ディートリッヒが脇で登場します。これにも驚きました。儲け役ですが、うーん、美しいです。

 

このブログ作成にDVD版を鑑賞しています。           八点鐘

 

追記 この映画は公開当時スプラッシュ公開だったそうです。何と言うかもったいないことです。今回鑑賞したのはウェルズが残したメモによって修復された110分程度修復版です。

 

 

 

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「ラ・カリファ」エンニオ・モリコーネの音楽が有名な日本未公開の作品ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ラ・カリファ」(1970)です。

                 

カリファ(ロミー・シュナイダー)の夫が、労働争議時に警官隊の銃撃を受け、血塗れの最後を看取る。涙も枯れるカリファだったが、次第にその会社の所有者である実業家ドベルトと親しくなっていくカリファ。カリファに感化されて労働者よりの動きをすることにより、ドベルトは他の実業家からの敵意を受けることになるのだが、彼はそうとも知らずに…

映画は労働争議物で、私は個人的にマウロ・ボロニーニ監督「わが青春のフローレンス」のような映画を考えていましたが、全く別物でした。作家出身の監督アルベルト・ベヴィラクアの腕前は冴えなくて、全体に今一つと言う感じです。但し、ロミー・シュナイダーは美しく、素晴らしいですが。この手の社会派映画であれば、フランチェスコ・ロージー監督の出番ですがね。同時期の映画としては「太陽は知っている」「追想」の方をお薦めします。

70年頃の労働争議物なので、何となく私は映画を見ながら、あの浦山桐郎監督作品「私が棄てた女」(1969)を思い出しました。重い映画で、主人公が人より良い生活を得る為、人を蹴落としてのうのうと生活する映画でしたが、スクリーンから醸し出される雰囲気が似ているなと。

このモリコーネ作曲の「ラ・カリファ」のテーマはとても有名ですが、映画はずっーと未公開でした。今回、日本で初めて公開されたことに感謝します。が、公開された91分版で話が繋がらない様な所が散見され、もっと長いバージョンがある様に思われます。キネノートで確認すると上映時間112分と有ります。         八点鐘

                                 

                         

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追記 この作品、評判が良くなかったので鑑賞するのを止めようかと思いました。理由は名古屋地区で公開しないので京都まで見に行く必要があったからで、逡巡しましたがやはり見て正解でした。色々ある映画ですがやはり見て良かったと思います。お金は掛かりましたが。アップリンク京都さん有難う。今後も名古屋スルー作品が有れば、見に行きたいと思います。





「スノー・ロワイヤル」"最強親父"リーアム・ニーソン主演のノワールアクション映画ですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「スノー・ロワイヤル」(2019)です。

コロラド州キーホーと言う小さな町に住むコックスマン(リーアム・ニーソン)は、人々の為に除雪車で仕事をして名誉町民として尊敬されていた。そんな彼の息子カイルはデンバーの麻薬カルテルに間違えて殺害されてしまう。カルテルに殺されたことを知ったコックスマンは、短銃身ライフルを造り3人の容疑者を問答無用で始末してしまう。カルテルのボス、カルコートは三人の子分の殺害者を探し始めるのだが…

監督はハンス・ペテル・モランド、ノルウェーで2014年に監督した「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」をハリウッドでリメイクした映画です。正直、中々の力量の持ち主だと思います。

あの「96時間」から始まるリーアム・ニーソンの"最強親父"物の一つです。でも、この作品、少し味わいが違います。そうですね、"コーエン兄弟"スタイルというかタランテーノのような味わいもあり、全体にブラックユーモア味もです。

冬季のデンバー近郊のキーホーという町でのお話なので、特に雪山シーンが素晴らしく、絵、構図もなかなか良くて、且つキャスト、そのプロットもなかなか面白くてサスペンスも効いており、ラストも面白い。

カルコートの手下が言う、20ドル札でホテルで女性客室係を落とす方法の小咄など人を食ったような話ですが、良く映画に馴染んでいるように思います。馬鹿々々しいですが笑えます。

こういう映画を見ていると、やはり映画に必要なのはホンと演出力だ、と感じ入る次第です。個人的には、月に1本程度この手の映画が鑑賞できると、私は本当に至福な時間を送れるなと感じました。

このブログ作成にBD版を鑑賞しています。             八点鐘

 

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「ゆりかごを揺らす手」カーティス・ハンソン監督の良く出来たサスペンスショッカーですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「ゆりかごを揺らす手」(1992)です。

二人目の子供を妊娠したクレア(アナベラ・シオラ)は、産婦人科医で診察を受けるが素手で身体を触られ、その産婦人科医を訴えた。彼はその件で自殺をした。

クレアには二人目が誕生したので、住み込みのベビーシッターを雇うことになった。やって来た女性はペイトン(レベッカ・デモーネイ)と言い人当たりの良い人だったが、彼女は自殺した医師の妻であり、その復讐のためにやって来たのだった…

多くの映画ファンがこの作品でカーティス・ハンソン監督の名を憶えたことだと思います。とても良く出来たサスペンスショッカーで、後半サスペンスたっぷりでこの手の映画が好きな方は歓喜の声を上げたことでしょう。私もその一人ですが。

加えて、結構重要な役でジュリアン・ムーアがスクリーンに登場します。BMW735iを乗り回す、嫌みと言うか少し根性が曲がった不動産会社社長としていい感じです。頭の回転が良いので、ペイトンの素性を見抜きにクレアに連絡しようとしますが、ペイトンが仕掛けた植物用温室の天井窓を利用したブビートラップに嵌まり、お陀仏になってしまうのが残念ですが。

後半、特にクレアがペイトンの正体を暴いてからのショック演出がなかなか良く出来ており、例えば赤ちゃん用泣き声用スピーカーの使い方などなかなか良いと思います。うーん、美しいです。少し古い作品ですが、なかなか良く出来ているのでご紹介しました。

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「幸せはパリで」カトリーヌ・ドヌーブ&ジャック・レモンのロマンチックコメディですが…

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「幸せはパリで」(1969)です。

 

 

ウォール街で働くハワード(ジャック・レモン)は投資部長に昇進した。その日はオーナー社長ガンサーの高層マンション宅でパーティが開催され、ハワードも招待された。そして、彼は美しいフランス女性カトリーヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)に一目惚れ。彼女も夫ガンサーに愛想を突かしており、二人は意気投合してパリで新生活を営むために空港に向かおうとするのだが…

時はニューシネマ全盛期、何かとぼけた様な味のコメディです。監督があの「暴力脱獄」のスチュアート・ローゼンバーグで、ジャック・レモンと全盛期のカトリーヌ・ドヌーブが共演する異色の作品になっています。少し場違いな感じですが。

又、脇が結構良いんですね。ピーター・ローフォード、マーナ・ロイ、シャルル・ボアイエ、サリー・ケラーマン等で、あの"ホット・リップス"がレモンの妻役でなかなか見せてくれます。うーん、美しいです。

全体に緩い作品ですが、一番美しい頃のカトリーヌ・ドヌーブとブレーク前のサリー・ケラーマンを見ることが出来れば、まあハッピーですよね。どちらかと言えばサリー・ケラーマンの方が弾けていたようで。頑張れ、世紀の美女カトリーヌ・ドヌーブ!!

主題歌"エイプリルフール"は、作曲バート・バカラック、ハル・デービツド、歌はディオンヌ・ワーウィック。名曲ですね。では、パリでお幸せに…

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追記 ローゼンバーグ監督はやはり「暴力脱獄」「マシンガン・パニック 笑う警官」等の系統ですね。

 

「汚名」ヒチコック監督のサスペンスフルなエスピオナージスリラー

レタントンローヤル館(八重垣)にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介する映画は「汚名」(1946)です。

                           

FBI捜査員デヴリン(ケーリー・グラント)は、ナチスの協力者で有罪判決を受けたフーバーマンの娘アリシア(イングリッド・バーグマン)に近づく、それはブラジルに隠れているナチ残党グループの動向を調査する為だった。アリシアは嫌がったが、渋々デブリンに協力し、ナチ残党グループのセバスチャン(クロード・レインズ)に近づくのだった…

若い頃鑑賞した時は良く出来ているなと言う程度でしたが、あのトリュフォー監督著「映画術ヒッチコック/トリュフォー」を読んでから見方が変わりました。何か惚れ惚れする様な映画であることが漸く理解できました。

特に、映画中盤セバスチャン邸で催される晩餐会での酒蔵室の鍵のサスペンス、ヒッチタッチの素晴らしさには驚かされます。カットと言い、アングルと言い、もう時代を超越しています。こういうサスペンスは凄いの一言です。

オマケに、アリシアとデヴリンのラブロマンも絡み合って、うーん、美しいです。加えて、キスの3秒ルールを嘲笑うかのような2分半のロングキスシーン等とても素晴らしい効果を上げています。

ラストも、下手なアクションよりもサスペンス重視のテイクで、美しいです。ケーリー・グラントも悪くありませんが、特にイングリッド・バーグマンが素晴らしいと思います。同時期の「カサブランカ」「誰がために鐘は鳴る」より私はこちらを選びます。

 

ブログ作成にBD輸入版を鑑賞しています。国内盤を所有していますが、画質が悪く我慢できなかったので最近クライテリオン版を購入しました。画質は比べ物になりません。

 

追記 その後、ハリウッドを飛び出しロッセリーニ監督の下へ。が、再びハリウッドに戻ります。色々な作品に主演後、遺作はベルイマン監督「秋のソナタ」でした。

 

 

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        バーグマン主演映画でこの作品が、好きですが